ISA-95時代のスマートファクトリー:Machbase Neoがつなぐデータの流れ

MachbaseはISA-95をどのように守り、活用しているのでしょうか?
工場の中に入ってみましょう。
数百台の設備が休みなく稼働し、そこに取り付けられたセンサーが温度、振動、圧力、電流のデータを毎秒生み出しています。
生産ラインが1本停止すると、担当者は原因を探るためにPLCのログを確認し、SCADAの画面を調べ、ERPに記録された生産実績と照合します。
しかし、この過程で繰り返し直面する問題があります。
設備が話す言葉と、管理システムが理解する言葉が異なるのです。
同じ「生産量」という言葉でも、現場設備、MES、ERPが異なる名称、単位、データ構造を使っていれば、いくらセンサーを増やしても工場全体で共通の言葉を使うことは困難です。
この問題を解決するために生まれた標準がISA-95です。
時系列データベースを専門とするMachbaseは、この標準の考え方を製品とデータの流れに取り入れ、工場の異なる階層が共通の言葉でやり取りできるよう支援しています。
本記事では、ISA-95とは何か、そしてMachbaseがそれをどのように守り、活用しているのかを見ていきます。
ISA-95:工場を5つの階層に分ける標準
ISA-95は、国際計測制御学会(ISA)が策定・維持する国際標準で、IEC 62264またはANSI/ISA-95という名称でも知られています [1]。
この標準は1990年代にPurdue Enterprise Reference Architecture(PERA)を基に開発されました。21世紀初頭にISA-95 Part 1が公表されて以来、複数のパートへと拡張され、企業システムと製造制御システムを統合するための原則を定めてきました [1]。
公式の定義では、ISA-95は物流システムと製造制御システムの統合を目的とする国際標準群とされています [1]。
また、現在では世界の製造企業の90%以上が、自動化の改善にこの標準を活用していると紹介されています [1]。
ISA-95の中核となる考え方は、シンプルでありながら強力です。
異なるシステムやソフトウェアが、共通の言葉でやり取りできるようにすることです [1]。
そのためにISA-95は、工場を一般にピラミッド状で表される5つの階層(Level)に分けています [1]。
![表1.ISA-95の5階層モデル [1]](https://static.wixstatic.com/media/1d44be_a7e0be3541184ebaa60f4b119b186db5~mv2.png/v1/fill/w_980,h_347,al_c,q_85,usm_0.66_1.00_0.01,enc_avif,quality_auto/1d44be_a7e0be3541184ebaa60f4b119b186db5~mv2.png)
最下層のLevel 0で機械やセンサーが生み出した生データは、Level 1のPLCを経てリアルタイムの計測値になります。
このデータはLevel 2のSCADAやHMIで監視・制御され、Level 3のMESで生産スケジュールや保全作業の実行情報につながります。
さらにLevel 4のERPが、それらを需要予測、受注、事業計画へとつなぎます [1]。
特にMESはISA-95のLevel 3に位置しており、ISA-95を適用することでMESとERPの間の通信関係をより明確に定義できます [1]。
ISA-95は、この5階層に加えて3つの中核モデルを示しています。
役割、活動、相互作用を定義する活動モデル(Activity Model)、設備・資材・人員の定義を標準化して共通言語をつくるオブジェクトモデル(Object Model)、データの流れとセキュリティ・アクセス規則を扱う情報モデル(Information Model)です [1]。これらのモデルが連携し、トレーサビリティ、スケジューリングの精度、品質管理の向上に貢献します [1]。
なぜ今、ISA-95が再び注目されているのでしょうか?
ここで、1つ確認しておきたいことがあります。
ISA-95は、新しく登場した標準ではありません。
長年にわたり、製造現場の統合を支える枠組みとして活用されてきました。それでも今あらためて注目される理由は、データの爆発的な増加にあります。
スマートファクトリーの普及とともに、工場内のセンサー数は急速に増えています。
産業用IoT(IIoT)を基盤とするインダストリー4.0の流れの中で、製造企業は通信や接続の問題をこれ以上先送りできなくなっています [1]。
センサーが増えればデータも大量に発生しますが、名称や形式が異なるまま分散していては、十分な価値を生み出すことはできません。
標準化された言葉でデータを整理してこそ、リアルタイムの可視性を確保し、複数の工場や地域に一貫した運用を展開できます [1]。
ここで、時系列データベースの役割が重要になります。
センサーが生成するデータは、本質的に時間順に蓄積される時系列データです。
Level 0とLevel 1で秒単位、あるいはミリ秒単位に発生する大量のデータを、損失なく収集し、圧縮して保存し、必要なときにすぐ検索できなければ、その上に位置するMESやERPも十分に機能できません。
標準が適切に定義されていても、それに沿ってデータを流すインフラがなければ、現場で価値を生み出すことは困難です。
Machbaseは、標準の土台となるデータを処理します
Machbaseが注力しているのは、まさにこのデータインフラの領域です。
Machbaseの公式サイトでは、TPCベンチマークで世界トップの性能を実証した時系列データベース技術が紹介されています [2]。また、急増するデータをリアルタイムで処理し、データを失うことなく最大100倍まで圧縮できると説明しています [2]。
さらに、11年の事業実績、150社以上の顧客、1日平均1,000億件以上のデータ処理量を挙げています [2]。
ISA-95の観点から、Machbaseの役割を見てみましょう。
ISA-95ピラミッドの下部にあたるLevel 0からLevel 2の現場階層では、生のセンサーデータとリアルタイムの計測値が継続的に発生します [1]。
このデータを安定して受け取り、保存することが、時系列データベースの中核的な役割です。
MachbaseのIoTデータベースサーバーであるMachbase Neo( https://neo.machbase.com )は、IoTセンサーが直接データを送信できるMQTTプロトコルと、アプリケーションがデータを検索できるHTTP経由のSQLの両方をサポートしています [3]。
Raspberry Piのような小型機器から高性能サーバーまで幅広く導入できるため [3]、設備に近いエッジ環境から中央サーバーまで、一貫したデータ層を構築できます。
外部システムとの連携も重要な特徴です。
Machbase Neoは、SQLite、PostgreSQL、MySQL、MS-SQL、MQTTブローカー、NATSに接続するブリッジ機能を提供しています [3]。
ISA-95が重視するのは、まさにこうした階層間の円滑なデータ交換です [1]。
Machbaseは、現場で収集した時系列データを上位階層のさまざまなシステムへ渡す経路を、標準インターフェースとして提供しています。
MQTT・HTTPによる収集、上位システムへのブリッジ、標準化されたメタデータと専用APIによるデータアクセス [2] という構成は、ISA-95が目指す「共通の言葉」とつながっています。
現場の事例:MESとつながるMachbase Neo
ここからは、実際の製造現場の事例を見ていきます。
自動車用モーターを専門に製造する、M社の事例です [4]。
M社の目標は、生産設備のデータをリアルタイムで収集し、設備状態の監視システムを構築することでした [4]。
そのためには、各生産ラインの複数のPLCからデータを収集し、ラインごとの状態を監視する必要がありました。
PLCは、先ほど説明したISA-95のLevel 1、すなわちセンシングと操作を担う階層にあたります [1]。
さらに、収集したアラームと工程進捗のデータを既存MESにインターフェースで接続し、MES画面で確認できるようにする必要がありました [4]。
ISA-95の観点では、Level 1の現場データをLevel 3のMESへ正確に届けるという課題でした。
こうしたエッジ環境でのデータ収集・保存・転送の役割は、Machbase Neoを中心に説明できます。
Machbase Neoは、MQTTとHTTP経由のSQLをサポートし、小型のエッジ機器から高性能サーバーまで導入できる高速時系列データベースサーバーです [3]。
M社では、生産ラインに配置した計7台のエッジデバイスにMachbaseの時系列データベースを組み込み、エッジコンピューティング環境を構築しました [4]。
エッジデバイスで一次収集・保存したデータは、中央サーバーへリアルタイムで自動転送するよう構成されました [4]。
この構成は、ネットワークが一時的に切断されても、現場データの損失を減らすのに役立ちます [4]。
また、MESに必要なアラームと工程進捗のデータは、MS-SQLインターフェースを通じてエッジデバイスから送信するよう構成されました [4]。
その結果、MES上でアラームや進捗データを確認しながら、工程の状態をリアルタイムで監視できるようになりました [4]。
蓄積された設備データは、品質分析や設備の予知保全の基盤としても活用できるようになりました [4]。
この事例をISA-95の5階層に当てはめると、データの流れがより明確になります。
Level 1のPLCで生成されたデータがMachbase Neoを基盤とするエッジのデータ層に保存され、MS-SQLインターフェースを通じてLevel 3のMESへ渡されます。
そしてデータは、人が理解し活用できる工程状態や予知保全の情報につながります。これは、ISA-95が定義する階層間のデータの流れを、実際の工場で実現する方法といえます。
標準を守るだけでなく、活用する段階へ
MachbaseとISA-95の関わりは、大きく2つに整理できます。
1つ目は、標準を守る役割です。
Machbaseは、現場階層の時系列データをMQTTやHTTPなどの標準プロトコルで受け取り、ブリッジやインターフェースを通じて上位システムにつなぎます [3]。これにより、現場設備、データプラットフォーム、MESといった異なる階層が共通の言葉でやり取りできる基盤を整えます。ISA-95が求める相互運用性を、データインフラの面から支える仕組みです。
2つ目は、標準を活用する役割です。
Machbaseは、単なる保存にとどまらず、分析、応用、操作まで一体的に扱うデータアーキテクチャを目指しています [2]。データの収集から転送・保存・分析・可視化までをカバーする統合ソリューションスタックを提供しています [2]。Machbase Neoには、データ変換・可視化言語のTQLとリアルタイムダッシュボードが標準搭載されています [3]。そのため、標準化された階層構造に蓄積したデータを、すぐに現場のインサイトへと結び付けられます。M社で整備された品質分析と予知保全の基盤 [4] は、この活用段階の価値を示しています。標準を守ることは終着点ではなく、その上で新たな価値を生み出す出発点なのです。
おわりに:データで始まり、データで終わる
スマートファクトリーの発展に伴い、産業現場でデータを収集するセンサーは増え続け、収集間隔は短くなり、保存すべきデータ量は急速に増加しています。
こうした中でISA-95は、工場の異なる階層が道を見失わないための地図であり、共通の言葉となります。
Machbaseは、その地図の上を実際に流れるデータを処理し、つなぐ高性能なエンジンの役割を担います。
「企業の競争力はデータで始まり、データで終わる」というMachbaseの理念 [2] は、標準を守り、活用する理由にも通じています。
どれほど優れた標準でも、その上を流れるデータが遅かったり不正確だったりすれば、現場で価値を生み出すことは困難です。
一方、高速で正確なデータが明確に定義された標準の枠組みと結び付けば、工場はようやく共通の言葉で話し始めます。
MachbaseとMachbase NeoがISA-95を守り、活用することは、こうした「対話する工場」を現実にする取り組みなのです。


