さらに賢くなったAIエージェント:neo-pkg-llm-chat 2.0.0リリース
自然言語でデータについて尋ねると、AIがチャートを描き、ダッシュボードまで作ってくれる時代になりました。
Machbase Neoのneo-pkg-llm-chatパッケージは、そのような体験を実現するLLMエージェントです。
ただ、以前のバージョンを使った方は、一度はこんなもどかしさを感じたかもしれません。
「OllamaのようなローカルLLMを接続したら、関係のないツールばかり呼び出す…」
「APIの費用が、思っていたより高いのでは?」
「複数人で使うと、誰かが重い分析を実行している間、ほかの人の応答まで遅くなります」
私たちMachbaseも同じ課題を感じていました。そこで、neo-pkg-llm-chat 2.0.0では全面的に設計を見直しました。本記事では、その成果をご紹介します。
従来の1.xと比べて何が良くなったのか、主なポイントを見ていきましょう。
ハーネス構造の導入
JSHを基盤とする単一パッケージ
トークン使用量を最大80%削減
その他の改善点
ひと目で分かる1.xと2.0の比較
1.ハーネス構造の導入:AIエージェントの「考え、行動する」仕組みが進化
従来の1.xでは、ユーザーからのあらゆる質問をほぼ同じ方法で処理していました。
「昨日のデータを見せて」という単純な質問でも、「過去1か月の振動データから異常パターンを分析してレポートを作って」という複雑な依頼でも、AIに同じ26個のツールをすべて提示し、適切なものを自分で選ばせていました。
そのため、LLMが混乱することがよくありました。単純な検索なのにダッシュボードを作ろうとしたり、レポートを頼んだのにチャートだけ描いて終わったり。高性能なClaudeでも、ときには見当違いの動きをしていました。
2.0.0では、ハーネス(harness)構造を導入しました。
簡単にいえば、ユーザーの意図に合わせて、AIの作業環境をあらかじめ整理しておく仕組みです。

8種類の意図に対応する機能(Skill)
まずユーザーが何を求めているかを分類し、その意図に必要なツールだけを選んで提示します。
ユーザーの意図 | 実行する処理 |
基本分析 | データ検索、チャート作成、ダッシュボード生成 |
高度な分析 | FFTや統計などの複雑な分析 |
レポート | 4種類のテンプレートによるHTMLレポート生成 |
データ検索 | 単純な検索とSQL結果の返却 |
ドキュメント検索 | Machbaseのマニュアル・ドキュメントを検索 |
タイマー | TQLタイマーの登録・管理 |
システム情報 | システムの指標・状態を取得 |
一般的な会話 | その他の自由な会話 |
たとえば、ユーザーが「BEARINGテーブルの昨日のデータを見せて」と依頼すると、
システムは単純なデータ検索だと判断し、必要な3個のツールだけをAIに提示します。
26個の中から選ばせていた1.xとは、大きな違いです。
自動補正と安全策も強化
LLMは、ときどき間違えます。
チャートを描くのを忘れたり、本来は大文字のタグ名を小文字で送ったり、データを確認する前にダッシュボードを作ろうとしたりします。
2.0.0では、こうしたよくある間違いを自動的に検出する安全策を設けました。
分析は終わったのにチャートがない? → チャートを自動生成します。
temperatureと送られたものの、実際のタグはTEMPERATURE? → 大文字・小文字を自動補正します。
同じツールが失敗を繰り返している? → 無限ループを防ぐため停止します。
存在しないタグ名で呼び出そうとしている? → 実行前に遮断し、不要なAPIの消費を防ぎます。
いわば、LLMが間違えても対処できる環境を整えたのです。
その結果、ユーザーに提示される結果の品質は、目に見えて安定しました。
2.Machbase Neoの内部へ:JSHを基盤とする単一パッケージ
1.xを導入した方なら、バックエンドのneo-pkg-llmとフロントエンドのneo-pkg-llm-chatを別々に取得し、Goでビルドする必要があったことをご存じでしょう。
Goコンパイラーの導入が必要で、プラットフォームごとにバイナリも異なるなど、手間がかかりました。
2.0.0では、Machbase Neo内部のJSH環境で動作するよう、全面的に再実装しました。
何が改善されたのでしょうか?
Goのビルドは不要です。Machbase Neoがあれば、その場で実行できます。
パッケージは1つだけです。バックエンドとフロントエンドを統合しました。
プラットフォームを気にする必要はありません。Windows、Linux、macOSで同じように動作します。
Machbase Neoと一体化します。Neoの内部APIに直接アクセスするため、データの流れがより高速で効率的になります。
V8.5で強化されたJSH環境の力を、よく示す事例といえるでしょう。
Machbase Neoをインストールし、パッケージを一度コピーすれば完了です。
ユーザー別の設定も可能になりました
複数のユーザーが、それぞれの設定で利用できるようになったことも改善点です。
ユーザーAはClaude、BはGPT-4、Cは社内のOllamaを利用できます。
各自が自分のAPIキーを使用できるため、部署ごとに費用を分けて請求できます。
セキュリティ要件に応じて、一部のユーザーにはローカルのOllamaだけを許可できます。
企業がチーム単位で導入する場合に、特に役立つはずです。
3.トークン使用量を大幅削減:最大80%
ユーザーが最も実感しやすい変更点かもしれません。
なぜ1.xでは多くのトークンを使っていたのでしょうか?
以前のバージョンでは、ユーザーの質問ごとに、約8,200トークンのシステムプロンプトとツール定義を丸ごとLLMへ送っていました。
「昨日のデータを見せて」という単純な質問にも、26個すべてのツールの説明を送っていたのです。
たとえるなら、お客様が「水を1杯ください」と言うたびに、レストランのメニューを最初から最後まで読み上げていたようなものです。
2.0.0では、意図に必要な情報だけを送信
先ほど紹介したハーネス構造により、AIが受け取るのは、その意図に必要なツールと説明だけです。その結果、トークン使用量は次のように減りました。
作業 | トークン使用量の削減率 |
データ検索 | 83% |
システム情報 | 83% |
レポート生成 | 78% |
ドキュメント検索 | 77% |
基本分析 | 68% |
タイマー操作 | 59% |
高度な分析 | 49% |
なぜこれが重要なのでしょうか?
1.API費用を削減できます
ClaudeやGPTはトークン単位で課金されるため、トークンの削減が直接コスト削減につながります。データ検索のような頻繁に行う作業では、80%の削減は大きな差になります。
2.応答が速くなります
LLMが処理するトークンが少ないほど、応答の開始が早くなり、全体の応答時間も短くなります。特に、最初の文字が表示されるまでの時間(TTFT)の短縮を実感できます。
3.ローカルLLMでも安定して動作します
Ollamaなどで利用するローカルLLMは、一般にコンテキストウィンドウが小さかったり、長い入力で性能が低下したりする傾向があります。トークンを減らすと、小型モデルでも安定して動作します。Ollama環境では、圧縮した英語のプロンプトを自動的に使用するため、同じ作業でもさらに35~40%少ないトークンで処理できます。
その他の改善点
セッションを分離しました
以前は、1人が重い分析を実行すると、ほかのユーザーの応答も遅くなっていました。
2.0.0では、ユーザーごとに独立した処理領域を持つため、1人の作業がほかの人に影響しません。あるユーザーで問題が起きても、ほかのユーザーは影響を受けずに利用を続けられます。
レポートの表現がより自然になりました
1.xでは、安全スコアが95点なのに、「危険!直ちに教育が必要!」といった過剰な警告が表示される場合がありました。
2.0.0では、スコアに応じて表現の調子を自動調整します。
90点以上 → 前向きで評価する表現
70~89点 → バランスの取れた表現
40点未満 → 重大な問題を中心に説明
振動の重大度区分(Good/Warning/Danger/Critical)も見直し、振動分析レポートの信頼性を高めました。
ひと目で分かる1.xと2.0.0の比較
項目 | 1.x | 2.0.0 |
導入 | Goのビルドが必要、2つのパッケージ | JSHベース、単一パッケージ |
ツール | すべての質問で26個を提示 | 意図に合わせて必要なツールを選択 |
トークン使用量 | 毎回約8,200トークン | 49~83%削減 |
設定 | 共通の設定 | ユーザー別の設定 |
処理 | 単一のプロセスを共有 | ユーザーごとに独立した処理 |
エラー対応 | 一部を補正 | 自動補正と安全策 |
レポートの表現 | 一律 | 結果に応じて自動調整 |
おわりに:より賢く、より速く、より効率的に
neo-pkg-llm-chat 2.0.0を開発するにあたり、私たちが最も重視したことは1つでした。
「お客様がMachbase NeoのAIエージェントを、実際の業務で使えるようにすること」
派手な機能を見せるだけのデモではなく、実際の運用環境で、安定して、適切なコストで、複数人が同時に利用できるAIエージェントが必要でした。
2.0.0は、その方向へ進む第一歩です。
Machbase Neoと一体化したLLMエージェントが、どのような可能性を広げるのか、私たちも期待しています。
今後の計画
既存機能のさらなる高度化
さまざまな新機能の追加
ご要望に応じたカスタムレポートテンプレートの提供
Machbase Neo V8.5とともに、新しくなったAIエージェントをぜひお試しください。


