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【スマートファクトリー基礎知識 第1回】国際標準フレームワークISA-95

52 分前
読了時間: 5分


はじめに


情報通信技術(ICT)の発展により、業務を変革するデジタルトランスフォーメーション(DX)の重要性が高まっています。製造業では、その取り組みをスマートファクトリーという概念で捉えることができます。


スマートファクトリーを学ぶ際、PLCやSCADAなど、見慣れない用語が最初の壁になることがあります。個々の言葉を別々に学ぶより、全体の中でどのような役割を担うのかを見ると、理解しやすくなります。


企業システムと製造システムの構造や統合を考えるための国際的な枠組みが、ISA-95です。本記事では、その枠組みを通じて主な用語と概念を紹介します。




ISA-95の概要


市販のMESやERPは、それぞれ異なるデータ定義やインターフェースを採用してきたため、連携が容易ではありませんでした。そのため、企業システムと制御システムを統合する共通規格が求められました。ISA-95の開発は1995年に始まり、ISA(International Society of Automation)がSAPやABBなどの主要ベンダーと協力し、ANSIの標準化の枠組みの下で進めてきました。

この規格は、生産と関連活動をシステム全体で定義・統合し、業務上のよりよい意思決定を支援します。




ISA-95の五つのレベル




レベル0:物理的な生産プロセス

自動化のためのデータを生み出す、実際の生産環境を指します。工場の現場、設備、車両などから、生産に関わる生の信号が発生します。一つ一つの測定値は小さくても、総量は膨大になり、ミリ秒やマイクロ秒の間隔で測定されることもあります。

物理的な環境には、リアルタイムの測定値を提供するセンサー、計測器、スマートスターターなどの機器が含まれます。


この領域では、次のような機器の設計、設置、電気接続、設定、プログラミングを扱います。


  • センサー、検出器、分析器、インテリジェント計測器

  • RFIDリーダーとバーコードリーダー

  • スキャナーとマシンビジョン用カメラ

  • 電力品質監視(PQM)システム

  • スマートスターター、過負荷継電器、可変周波数ドライブ、モーター

  • インテリジェントポジショナーを備えたバルブとアクチュエーター

  • 産業用ロボットと協働ロボット

  • 計量システムと定量供給システム

  • フィールドバスとリアルタイム産業用ネットワーク。EtherNet/IP、PROFINET、Modbus TCP、EtherCAT、HART、DNP3、IEC 61850、OPC UAなど。




レベル1:検知と操作

レベル1は、製造プロセスを検知し、操作する活動です。センサーや接続された機器がデータを収集し、コントローラーやサブシステムへ送信します。

設備に対しては、温度、圧力、サイクル数などを測る「検知」と、バルブを閉じたり機器をオン・オフしたりする「操作」が行われます。


この領域の設計、設置、接続、設定、プログラミングには、次のようなシステムが関わります。


  • 産業用コントローラーとプログラマブルロジックコントローラー(PLC)

  • 分散制御システム(DCS)

  • 安全計装システム(SIS)


このレベルでは、データを集約することもできます。物理的なセンサーに接続された技術や自動化の仕組みにより、測定値へ文脈を与え、意味のある情報へ変換します。




レベル2:監視と上位制御

このレベルは、I/Oサブシステム、ロジックソルバー、コントローラーなどと連携し、製造環境を監視・制御します。例えば加速度センサーが振動データをPLCへ送り、許容範囲を外れた場合に機械を停止させることができます。


同じ考え方は、多くのセンサーと制御システムの組み合わせに適用できます。そのためには、産業用通信の仕組みを通じて、センサーを対応するサブシステムやコントローラーへ接続する必要があります。


代表的なシステムは次の通りです。


  • ヒューマンマシンインターフェース(HMI)

  • 監視制御・データ収集システム(SCADA)


HMIやSCADAは、毎秒数千件の測定値をトレンドとして表示し、過去データの分析にも対応します。SQL、REST API、XML、OPC UA、MQTTなどの技術が、自動化階層の上位システムとの双方向データ交換を支えます。




レベル3:製造オペレーション管理

レベル3には、生産目標の達成に向けた作業が含まれます。製造実行システム(MES)などを用いて、スケジューリング、負荷の平準化、生産の最適化を行います。


保全管理システム(CMMS)、SCADA、高度プロセス制御(APC)などのソフトウェアが、品質、生産、情報の整合性、排出、保全といった工場内の活動を支援します。


対象は機器の制御だけではありません。工場全体の自動作業と手作業を調整するために、人へ作業を指示することも含まれます。


このレベルのシステムやアプリケーションには、次のものがあります。


  • Microsoft SQL ServerやOracleなどのデータベース

  • 生産、環境、イベントに関するレポート

  • ExcelproのMIAなど、主要業績評価指標を表示するダッシュボード

  • レシピ管理とバッチ管理

  • 製造実行システム(MES)

  • 資材の搬送・保管管理

  • 品質管理


レベル3は、データ収集、生産計画、人員・資源管理、製品・バッチの追跡、履歴管理、品質・プロセス管理、性能分析、文書管理、保全など、産業ITの活動をまとめます。これらを、ほかのレベルと垂直に統合することが目的です。




レベル4:事業計画と物流

レベル4では、ERP、サプライチェーン管理(SCM)、保全計画などの企業システムを通じて、事業目標と製造活動を整合させます。


生産量や原材料など、事業・物流に関する意思決定を行います。適切な判断には、レベル3からの情報が欠かせません。


ERPと現場の運用システムを垂直に統合すると、稼働状況を適時に把握し、効果的な意思決定を行いやすくなります。




スマートファクトリーにおけるISA-95の意味


スマートファクトリーは、生産へICTを適用し、接続された設備から工程データを収集して、分析と制御によって製造効率を高める工場です。ISA-95は、そのためのシステム統合を考える枠組みと共通の基準を提供します。


この枠組みは、製造活動の各領域で用語をそろえるとともに、物理的な世界とデジタルな世界の関係を可視化します。


各レベルは、しばしばピラミッドで表されます。これは単なる上下関係ではありません。最下層で収集した膨大なデータが、選別、集約、処理、分析を経て、各レベルで使える情報になる流れを示しています。


本記事では、スマートファクトリーの主要な構成要素が、どの段階で何を担うのかを概観しました。PLCやSCADAなどの個別の要素については、別の記事で詳しく説明する予定です。



 
 
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