ESGのための選択:時系列データベースエンジン
はじめに
デジタル化が進み、暮らしのあらゆる場面でデータが生まれ、必要とされています。データは事業の重要な資産となり、収集、管理、分析、活用する能力と、それを支えるインフラの構築がますます重要になっています。
ビッグデータ分析やAI、機械学習の発展は、この流れをさらに加速させています。
一方、その基盤、とりわけデータセンターについては、ESGの中でも環境面の課題が指摘されています。
本稿では、どのような環境課題があり、どのような解決策が考えられているかを見ていきます。
データセンターに関わる環境課題
データの管理には、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器など、多くの装置が必要です。
多くの企業は、それらを収容するサーバールームを持っています。データを専門に扱うIT企業では、さらに大規模なデータセンターを設けます。いわば、さまざまなコンピューター機器を集めたホテルのような施設です。
データの重要性と需要が高まるにつれ、データセンターも大型化し、環境への影響が大きくなります。
主な課題を整理します。
電力の使用

Union Stationの顧客用データ室。画像:Global Access Point、パブリックドメイン、2008年。
最初に挙げられるのが電力消費です。電子機器を使う以上、電力は不可欠ですが、データセンターではその量が非常に大きいため、環境上の課題となっています。
多数の機器そのものに加え、次の要因でも電力が必要です。
1. 24時間運用
リアルタイム処理や世界各地へのサービス提供のため、データセンターは基本的に24時間稼働します。時間帯に応じてリソースを有効に使うことも、継続運用の理由です。
2. 温度と湿度の管理
サーバー、ストレージ、ネットワーク機器は動作時に熱を発生させます。適切な温度範囲を保ち、過熱による部品の損傷を防ぐため、冷却が必要です。
湿度も重要です。高すぎると結露による短絡や腐食のリスクがあり、低すぎると静電気が起きやすくなります。どちらも機器やデータの信頼性に影響します。
3. 冗長化
主要な構成要素を複数用意し、障害時にも動作を継続できるようにして、安定性と可用性を高めます。
機器の故障や災害に備える冗長化は、追加の設備と電力を必要とします。実際の増加量は、待機系を含む構成や運用方法によって異なります。
元記事が参照した当時の規模感を、次の数値から見てみます。
一般的な商業オフィスと比べ、データセンターの床面積あたりの電力使用量は10〜50倍になるという比較があります。元記事には約1,000kWh/㎡という値も挙げられていますが、集計期間は明記されていません。数万台のサーバーを持つ大規模施設を、約5万世帯の電力消費に例える資料も紹介されています。
韓国については、2022年12月時点で147施設、2029年までに約700施設へ増えるという当時の見通しが紹介されています。147施設の使用量3,337GWhは、比較対象とされた原子炉1基の年間発電量7,000GWhの半分近くに相当します。施設増加に伴う電力の確保が、大きな課題として捉えられていました。
水の使用

米国オレゴン州ダレスのGoogleデータセンターの冷却塔。写真:Google。
水の使用量も課題です。Googleは、2021年に世界のデータセンターで約162億リットルの水を使用したと公表しています。元記事では、米国南西部のゴルフ場29か所の使用量に相当する規模として紹介されています。
水は主に冷却に関わる設備で使われ、電力供給や非常用設備に伴う冷却でも使用される場合があります。
ラックや機器に冷却水を循環させるなど、冷却方法はさまざまです。冷却塔で蒸発冷却を使う方式では水を消費しますが、すべての冷却方式が同じ量の水を使うわけではありません。
非常用電源も設けられます。発電機の方式や冷却構成は施設によって異なるため、水使用量は実際の設備ごとに評価する必要があります。
電子廃棄物と有害物質

英国でリサイクルを待つ電子廃棄物。写真:Stefan Czapski/Geograph、CC BY-SA 2.0。https://blog.education.nationalgeographic.org/
ハイパースケールデータセンターは、非常に大規模な計算基盤を備える施設です。元記事は、その規模の一例として延べ床面積22,500㎡、サーバー10万台以上を挙げています。
同記事が参照したCiscoの2021年の数値では、世界の施設数は628とされています。韓国でも、LG U+の平村データセンターやNAVERの「GAK Sejong」など、大規模な施設が整備されています。
多数のサーバーが数年ごとに更新されると、大量の電子廃棄物が生まれます。元記事は4〜5年という更新期間や、電子廃棄物に含まれる有害物質の問題を取り上げています。
電子機器には、臭素系難燃剤などの化学物質や、鉛、水銀、カドミウム、ベリリウムなどが使われる場合があるためです。
元記事が参照した国連の報告では、2019年の世界の電子廃棄物は5,360万トンで、正式な回収・リサイクルが確認されたのは17.4%でした。確認できない残りの扱いや、処理費用・規制の違いによる国際移動も課題です。不適切な処理は、地域を越えた汚染につながります。
熱、騒音、電磁環境
データセンターは多くの熱を発生させ、冷却によって外へ排出します。周辺への排熱だけでなく、冷却に使う電力と、その発電に伴う温室効果ガスも考える必要があります。
多数の機器や空調による騒音、電磁環境への配慮も、周辺環境や生活との調和という観点から検討すべき事項です。
解決策
主な取り組みを紹介します。
冷却に必要な電力を減らす

Project Natick — https://natick.research.microsoft.com/
冷却用電力を減らすため、さまざまな方法が試みられています。
冷却はデータセンターの消費電力の大きな部分を占めます。元記事では40〜55%という例が示されていますが、割合は設備の効率や方式によって変わります。いずれにしても、冷却の改善は重要な検討対象です。
Googleは、水冷方式によって比較対象の冷却方式より電力使用量を10%減らした例を紹介しています。他の企業も、多様な方式で省電力化を進めています。
Metaは冷涼なスウェーデンのルレオにデータセンターを設け、冷却負荷を抑えました。MicrosoftはProject Natickで海中データセンターを実験しました。これらは元記事が紹介した取り組みです。
韓国でも、LG U+の平村・安養やNAVERの春川「GAK」などで、外気を活用し、冷却に必要な電力を抑える工夫が進められています。
データセンター全体の最適化

画像生成:Microsoft Bing Image Creator
サーバーやストレージなど、施設内の機器を最適化してエネルギー消費を減らすことも重要です。
不要になったアプリケーションや終了したサービスのサーバーが、使われないまま通電され続けることがあるためです。
インフラ管理会社Cormantの見積もりとして、元記事は、こうした「ゾンビサーバー」が全体の10〜30%に達する例を紹介しています。
不要なサーバーの停止、統合や仮想化、保持する必要のないデータの整理などにより、余分な設備を減らせば、エネルギー削減につながります。
電力供給の効率を高める

データセンター・通信施設における交流給電と高電圧直流給電の比較(NTT Technical Review)
24時間安定して稼働するには、蓄電池、発電設備、高信頼の空調などが必要です。それらへの給電構成を改善することも、省電力化の検討対象になります。
代表例は直流給電です。サーバー内部は直流で動作するため、変換段数を減らせれば損失を抑えられます。実際の効果は、各変換装置の効率と全体構成によって決まります。
また、燃料電池などの代替電源で従来の発電設備を置き換え、排出量や費用を減らす方法も研究されています。
ESGへの取り組みとしての時系列データベース
ESGは、企業経営の重要な観点となっています。
Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス)の3つを表し、企業が責任を果たしながら持続可能な経営を行っているかを見る枠組みです。
関連する制度や投資家の関心が高まり、企業の評価にも影響するようになっています。
時系列データベースは、これまでに挙げた設備面の改善とは別に、データ処理の効率から環境負荷を減らす可能性があります。
時系列データは、センサー値のように時刻と値が対応するデータです。時系列データベースは、その保存と提供に特化したソフトウェアです。
こうしたデータを扱うとき、専用のエンジンにより、汎用的な構成より少ない設備で処理できる場合があります。
必要な機器が減れば、運転・冷却の電力、水の使用、機器更新時の廃棄物も抑えられる可能性があります。
筆者の勤務するマークベースは、TPC(Transaction Processing Performance Council)のTPCx-IoT価格性能評価で優れた結果を公開しています。元記事で比較したHadoop系構成との間には、約6倍の価格性能差がありました。

その比較での価格性能指標は、Hadoop側が329.75ドル、Machbase側が54.85ドルでした。これは掲載された構成・試験条件に基づく比較です。
この差には、エンジン性能に加え、システム構成を簡素化できることも関係します。
例えば、ETRIとのプロジェクトでは、Hadoopを使う構成をMachbaseによって簡素化する方法を検証しました。

導入前:Hadoop

導入後:Machbase TSDB
この事業は、電力分野のビッグデータを収集し、深層学習アルゴリズムを開発するための基盤づくりでした。時系列データベースを適用することで、構成を簡素化し、ハードウェアの構築費用と時間、設備の物理的な規模を減らせることを示しました。
おわりに
環境とエネルギーは、企業の持続可能性に深く関わります。ESGが投資判断にも使われることは、環境課題が事業の将来と結び付いていることを示しています。
データと設備が増える流れを止めるのは難しくても、その環境負荷をどう抑えるかは、私たちの選択にかかっています。
時系列データベースは万能ではありませんが、適した用途では、必要な処理基盤を効率化する有力な方法になります。
Machbaseは、公開ベンチマークと導入事例を通じて、時系列データの処理に必要な構成を小さくする可能性を示しています。
環境負荷やESGに取り組む皆さまには、Machbaseの時系列データベースを活用した効率化も、ぜひ検討していただきたいと思います。


